歯周病とは?
日本で一番歯を失う口腔疾患
厚労省のデータを見ると、う蝕(虫歯)よりも歯周病が原因で抜歯になる割合が最も多いことがわかります。
中高年の抜歯は歯周病によって抜歯される割合が高いことがわかるのですが、このグラフで一番注意が必要なことは30代から40代にかけて、歯周病によって抜歯される割合が徐々にう蝕(虫歯)よりも増えてくることがわかります。
更にデータを分析すると、以下のような流れで歯周病による抜歯が増えていくことがわかります。
- 20代が歯周病の入り口になっている
- 30代を過ぎてから徐々に症状が顕在化してきて抜歯が少しずつ増える
- 40代後半になると抜歯の原因は、虫歯を歯周病が上回るほど増える
- 50代をになると、歯周病が原因で抜歯になる本数が格段に増える
このように、日本では歯周病が歯を喪失する一番の原因であることを理解していただけると思います。
歯周病専門医である当院は歯周病に立ち向かい、少しでも歯の喪失を防ぐために日々の診療に取り組んでいます。
歯周病の主な原因
歯周病の原因は主に直接的なものと間接的なものに分けられます。それぞれについてご説明します。
歯周病の直接的な原因はプラーク
プラークは細菌の塊です。バイオフィルムとも呼ばれています。
プラークの中には歯周病の原因となる細菌がいて、歯周病の進行に最も関与する3つの細菌をレッドコンプレックスと言います。
歯周病の原因となる細菌は常在菌のため、常にお口の中にいて、普段は悪さをしません。しかし、口腔内の衛生状態が悪くなると、細菌の病原性が高くなります。
細菌が出す毒素によって、歯周組織に炎症が起きてしまうことで歯周病が発症します。このプラークや歯石を除去しない限り、歯周病の進行が止まることはありません。
歯周病の間接的な原因は様々
歯周病の間接的原因は、口腔内と生活習慣の双方が関わります。
口腔内の問題が歯周病へ繋がる
- 歯石(プラークが石灰化したもの)
- 不適合な歯冠修復(クラウン)
- 不正咬合(悪い歯列)
- 咬合性外傷(噛み合わせ) など
生活習慣が歯周病の危険因子に
- 喫煙
- ストレス
- 睡眠不足
- 食習慣
- 口腔衛生習慣
- 遺伝
- お薬の影響 など
歯ぐきからの出血は歯周病を進行させるサイン
「歯ぐきから血が出たら歯周病のサイン」と聞いたことがあると思います。
その理由は先程説明した歯周病の進行に関与する3つの細菌であるレッドコンプレックスのうちの一つ、p,g菌が血液を栄養として増殖していきます。
出血を止めない限り増殖をやめることはありません。したがって、歯ぐきから血が出ることを見過ごしてはいけません。そして、歯ぐきから出血を止めることが歯周治療の1つのゴールでもあります。
歯周病の症状が認められる年齢
歯周病は20代半ばになると歯周ポケットが4mm以上あることが認められ、歯周炎の状態になっているということを示しています。
歯周病は年齢が高い人の疾患ではなく、若い頃から発症し、症状が顕在化されるのが中高年であるだけです。
自分は若いから歯周病ではないと思うのではあまり良い考えではないでしょう。また、40代以上の方は歯周病に対してより強い意識を保つ必要があるでしょう。
歯周病を放置しないために、次にチェックリストを掲載します。
歯周病のチェックリスト
歯周病は症状を感じない口腔疾患であることから、「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」と呼ばれています。
症状が顕在化する前に治療し、治癒・予防歯科に移行することができればベストであると言えます。また、チェックリストと照らし合わせて該当する症状があったら、そのまま放置せず、治療を行いましょう。
見た目でチェックをしましょう。
- 歯茎がピンクではなく、赤い
- 歯が長くなった、歯茎が下がった気がする
- 歯に隙間が出来てきた
- 出っ歯になってきた気がする
症状でチェックをしましょう。
- 歯茎が腫れている
- 歯磨きしたら、歯ぐきから血が出た
- 朝起きたらお口の中がネバネバしている
- 口臭が気になる、口臭が強くなってきた
- 歯がぐらついてきた
- 食事が噛みにくい
- 歯ぐき、歯に強い痛みがある
歯周病の進行段階
歯肉炎
歯茎が赤く腫れたり、歯茎から出血します。
自覚症状はほとんどありません。
軽度の歯周炎
軽度歯周炎は歯肉炎と同じような症状を伴いますが、 骨が溶け始めている状態です。歯周ポケットの目安が3mm〜5mm程度です。
当院の歯科衛生士が歯ブラシ一本で改善した症例をご紹介します。
軽度歯周炎(術前)
軽度歯周炎(術後)
基本情報 | 37歳・男性 |
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職業 | IT企業役員 |
主訴 | 他院で定期検診してから期間が空いたから検診したい |
現病歴 |
5~6年前より定期健診を受けていたがブラッシング指導などなく6ヶ月ごとに来院するように言われていたが、5年前から通院しなくなった。 歯茎からの出血があったがそのまま放置していた。 |
診断 | 歯周組織精密検査後、慢性歯周炎と診断 |
行った治療 | 歯周基本治療(口腔内のプラーク・歯石除去、ブラッシング指導、歯ブラシ処方、患者さんご自身でのセルフケア) |
治療結果 |
歯科医院でのプロフェッショナルクリーニングと患者さんの歯ブラシ1本で軽度歯周炎が改善致しました。 大切なのは患者さんに最適な歯ブラシを選択肢、磨き方を丁寧にお伝えすることです。冠者さんが一生懸命セルフケアに取り組んだ成果もあり、大掛かりな治療をせずに保ブラシ1本で改善することができました。 |
治療期間(通院回数) | 2ヶ月(通院回数:6回) |
治療費用 | 保険適用(通院回数・治療法・口腔状態によって費用が変わります。) |
治療を行った歯科衛生士のコメント |
歯周病は発見が早ければ早いほど、大掛かりな治療を必要とせずにプロフェッショナルクリーニングと歯ブラシ1本で改善することができます。 どれだけ良い治療してもセルフケアが正しく行われていないと歯周病は再発を繰り返してしまうので、定期的に歯科医院でチェックを行いましょう。患者さんに最適な歯ブラシを使わないと清掃性が高まらないので、歯周病が中々治らないという方はお気軽にご相談下さい。 |
中度の歯周病
歯茎が下がった気がする、歯に隙間が出来てきた気がする、歯が浮く感じがするといった症状が感じられます。
この時には歯周ポケットの目安が5mm〜7mm程度に進行しています。
重度の歯周病
歯と歯茎の間から膿が出てくる、歯がグラグラする、進行が進んでいると歯が抜けてしまったりします。
歯周ポケットの目安が7mm以上ある場合は重度の歯周病です。
歯周病と全身疾患との関連性
歯周病と全身疾患の関連性の高い代表的な病気は糖尿病です。
それだけでなく、早産や心疾患にも影響があると言われています。
最近ではアルツハイマーとの関連性があるとの報告もありますが、いずれにしろ、歯周病を予防することは健康維持・向上のために必要なことだと言えます。
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